預金通帳を見るのが趣味だった祖母

父方の祖母とは、6年前に亡くなるまで同居していました。祖父はその10年くらい前に亡くなりましたから、祖母はかなり長い間ひとり身だったわけです。
その祖母の一番の趣味は「預金通帳を見ること」。年金生活だったので、自分の年金と遺族年金が2か月ごとに振り込まれます。生活自体はすべて私の両親がめんどうをみていましたから、その年金はほとんどすべて祖母が自由にできるわけです。
祖母が自分のお金を使うのは、たまに友達と食事をしたり旅行へいったり、芝居見物へ行ったりすることくらい。貴金属類には興味がないらしく、またブランドものを買うような趣味もなかったので、年金はどんどんたまっていきます。
祖母が持っていたのは、都市銀行の普通預金の口座1つでした。その通帳を毎日、日に何度となく開いてみては「うんうん」とうなずくのです。息子である私の父は、「みっともないからやめてくれよ」と言っていましたが、祖母は「だってこれくらいしか、楽しみがないんだから」と、聞く耳を持ちません。孫の私もあまり見たくない姿でした。
父は「昔はああじゃなかった」と言っていました。お金に関してはむしろ淡白なほうで、人におごられるよりもおごるほうが好きというタイプ。それが、祖父が亡くなってから変わったというのです。ひとりになってお金に執着するようになった、おそらくさみしさからそうなったんだろう、というのが父の見方です。
その祖母が亡くなって6年。今思うと、あれはけっして悪い趣味ではなかったような気がします。だれに迷惑をかけるわけでもないのだし、貯めたお金は父たち遺族に相続されたのですから、だれも文句のつけようがありません。
毎日、通帳を開いては「うんうん」とうなずいていた祖母の姿を、今はほほえましく、なつかしく思い出します。